秋にも注意したい花粉症|花粉症を現代医学・東洋医学・鍼灸医学から考える
10月に入り、「風邪ではないのに鼻水やくしゃみが続く」「目や鼻がかゆい」「咳や喉の違和感が気になる」という方はいませんか。
花粉症というと春のスギやヒノキを思い浮かべますが、秋にもブタクサ・ヨモギ・カナムグラなどの花粉が飛散します。
秋の花粉症は、鼻水・くしゃみ・鼻づまり・目のかゆみなど春と似た症状がみられるほか、咳や喉の違和感を伴うこともあります。
花粉症は、花粉に対して免疫系が過敏に反応して起こる季節性アレルギー性鼻炎です。
症状の現れ方は人それぞれで、
「水のような鼻水が止まらない」「鼻づまりのほうがつらい」「目のかゆみが強い」「頭が重く、身体までだるくなる」
など、同じ花粉症でも違いがあります。今回は、そんな秋にも注意したい花粉症について、現代医学・東洋医学・鍼灸医学の3つの視点から解説します。
現代医学からみた花粉症
花粉症は、花粉に対して免疫系が過敏に反応することで起こります。
代表的な原因には、
スギ
ヒノキ
ハンノキ
シラカンバ
イネ科植物
ブタクサ
ヨモギ
などがあります。
日本では特にスギ花粉症が多くみられます。
花粉が入ってくると身体では何が起こる?
鼻の中に花粉が入ると、身体は花粉に含まれる成分を「異物」として認識します。
花粉症の人では、身体が花粉に対して敏感に反応しやすい状態になっています。ここで重要になるのが、抗体・IgE抗体・肥満細胞(マスト細胞)・ヒスタミンです。
抗体とは?
抗体は、免疫の仕組みの中で、ウイルスや細菌、花粉などの異物を見分け、特定の物質に結びつくたんぱく質です。
いわば、免疫が「何に反応するか」を見分けるための目印のような役割をしています。
抗体にはいくつか種類があり、その一つがIgE抗体です。
IgE抗体とは?
IgE抗体は、抗体の一種で、特にアレルギー反応と深く関係しています。
免疫の中では、花粉など特定のアレルゲンを認識し、その情報を肥満細胞に伝えるような役割をしています。
花粉症では、このIgE抗体が肥満細胞(マスト細胞)の表面に結びつき、次に同じ花粉が入ってきたときに反応できる状態になっています。
肥満細胞(マスト細胞)とは?
肥満細胞(マスト細胞)は、皮膚や鼻・気道などの粘膜に多く存在し、身体に異物が入ってきたときに素早く反応する免疫細胞の一つです。
「肥満」という名前がついていますが、体重や肥満とは関係ありません。
花粉がIgE抗体と反応すると、肥満細胞が刺激され、内部に蓄えていたヒスタミンなどの物質を放出します。
つまり肥満細胞は、アレルギー反応を実際に起こす中心的な細胞の一つです。
ヒスタミンとは?
ヒスタミンは、肥満細胞などから放出される物質で、免疫反応や炎症反応に関わっています。
本来は身体を守る反応の一部ですが、花粉症ではこの反応が強く起こることで、鼻や目の神経や血管に作用し、
くしゃみ
水のような鼻水
鼻や目のかゆみ
などを引き起こします。
鼻づまりには、ヒスタミンだけでなく、その後に続く炎症反応や鼻粘膜の腫れなども関係しています。
花粉症の反応を簡単にすると
花粉が鼻に入る
↓
免疫が花粉を異物として認識する
↓
IgE抗体が花粉のアレルゲンに反応する
↓
肥満細胞(マスト細胞)が刺激される
↓
ヒスタミンなどが放出される
↓
くしゃみ・鼻水・鼻づまり・かゆみなどが起こる
という流れです。
つまり花粉症は、花粉そのものが単純に鼻を刺激しているだけではなく、本来は身体を守るための免疫反応が、花粉に対して強く起こることで症状が現れる状態なのです。
花粉症は鼻だけの問題ではありません
花粉症というと鼻水やくしゃみだけを想像しがちですが、
目のかゆみ
涙
のどの違和感
頭重感
頭痛
集中力低下
睡眠の質の低下
倦怠感
などを伴うことがあります。
鼻づまりによって夜間の睡眠が妨げられれば、日中の眠気や集中力低下にもつながります。
そのため治療では、「鼻水が出るかどうか」だけではなく、睡眠や日常生活にどの程度影響しているかを見ることも重要です。
現代医学ではどのように治療する?
現在の花粉症治療では、症状や重症度に応じて、
第2世代抗ヒスタミン薬
鼻噴霧用ステロイド薬
抗ロイコトリエン薬
その他の抗アレルギー薬
アレルゲン免疫療法
などが選択されます。
特に毎年花粉症が起こる方では、症状が非常に強くなってから治療を始めるよりも、花粉飛散開始時期や症状が軽いうちから治療を開始する「初期療法」が行われることがあります。
また、
マスク・眼鏡を使用する外から帰ったら花粉を落とす花粉を室内へ持ち込まない飛散量が多い時間帯の外出を減らす
といった花粉への曝露を減らす対策も重要です。
東洋医学では花粉症をどう考える?
東洋医学では、「花粉症」という一つの病名だけを見て治療方針を決めるわけではありません。
同じ鼻水でも、
「透明なのか、黄色いのか」「大量に出るのか」「鼻づまりが強いのか」「身体が冷えるのか、熱っぽいのか」「疲れやすいのか」「胃腸が弱いのか」
などを確認します。
つまり、
花粉症という病名を見るのではなく、その人にどのような状態が起こっているのかを弁証する
という考え方です。
「鼻は肺に開竅する」
東洋医学には、
「鼻は肺に開竅する」
という考えがあります。
これは、鼻の働きと「肺」の働きには深い関係があるという意味です。
ここでいう「肺」は、現代医学の肺という臓器だけを意味するものではありません。
東洋医学の肺には、
呼吸
鼻
皮膚
発汗
体表の防御
気や水分の巡り
などに関わる機能概念が含まれています。
そのため、
くしゃみ鼻水鼻づまり外からの刺激に敏感になる
といった症状を考えるときには、「肺」の状態を重要視します。
「衛気」と花粉症
さらに東洋医学には**衛気(えき)**という考えがあります。
衛気とは身体の表面を巡り、外からの刺激から身体を守る働きを持つ「気」と考えられています。
花粉症の場合、
身体の外から花粉という刺激が加わる+身体側の防御機能や体質
という両方を見るところが東洋医学の特徴です。
ただし、
「肺が弱いから花粉症になる」
と単純に決めつけるわけではありません。
実際には、寒熱・虚実をはじめ、鼻水の性状、舌、脈、胃腸、睡眠、疲労などを総合して判断します。
花粉症でみられる代表的な東洋医学的パターン
① 風寒・寒に傾いたタイプ
例えば、
透明でさらさらした鼻水
くしゃみが多い
鼻づまり
冷えると悪化する
温めると楽になる
などがみられる場合です。
東洋医学では、風や寒の影響を受けた状態として考えることがあります。
② 風熱・熱に傾いたタイプ
一方、
鼻や目のかゆみが強い
目が赤い
鼻の中に熱感がある
のどが乾燥する
黄色っぽい鼻汁が出る
などの場合には、熱に傾いている可能性を考えます。
したがって、
花粉症だから身体を温めればよい
というわけではありません。
寒熱を見分けることが重要です。
肺気虚
毎年花粉の季節になると症状が強く、
疲れやすい
風邪をひきやすい
声に力がない
息切れしやすい
汗をかきやすい
などを伴う場合には、肺気虚を考えることがあります。
肺や衛気の働きが弱く、外からの刺激に対する防御が十分に働いていない状態として捉えます。
脾との関係
花粉症なのに、なぜ胃腸を見るのでしょうか。
東洋医学では「脾」は飲食物から気や血を作り、水分を適切に巡らせる働きを担うと考えます。
そのため、
胃腸が弱い
軟便・下痢になりやすい
身体が重い
むくみやすい
痰が多い
食後眠くなる
などを伴う人では、脾の働きも確認します。
脾の働きが低下すると水分代謝が悪くなり、「湿」や「痰飲」が生じやすくなると考えるためです。
鼻水が多いからといって、鼻だけを治療するとは限らない理由の一つです。
腎との関係
さらに慢性的なアレルギー性鼻炎や、体力低下を伴うケースでは「腎」まで考えることがあります。
東洋医学では、
肺・脾・腎
は気や水分代謝に関して互いに関係していると考えます。
そのため慢性的な症状では、
鼻
↓
肺
↓
脾
↓
腎
というように、身体全体の状態まで確認していくことがあります。
ただし、すべての花粉症患者さんが肺虚・脾虚・腎虚になるわけではありません。
ここでも重要なのは実際に現れている身体所見を確認することです。
鍼灸では花粉症にどのように対応する?
鍼灸では、大きく二つの方向から考えます。
① 鼻周囲の症状へのアプローチ
鼻づまりや鼻周囲の不快感などに対して、顔面部や頭頸部などのツボを症状に応じて使用します。
代表的には、
迎香(げいこう)印堂(いんどう)上星(じょうせい)合谷(ごうこく)
などが用いられることがあります。
ただし、実際の施術では「花粉症だからこのツボ」というように一律には決めません。
症状と身体所見を見ながら選択します。

② 全身状態へのアプローチ
青風堂では鼻だけを見るのではなく、
寒熱
虚実
睡眠
疲労
胃腸の状態
冷え・ほてり
発汗
舌
脈
首肩の緊張
なども確認します。
例えば同じ「透明な鼻水」でも、
寒が強いのか肺気が不足しているのか脾の働きが弱く水分代謝が悪いのか
によって、施術の考え方は変わります。
現代医学的に考えられている鍼灸の作用
近年、アレルギー性鼻炎に対する鍼治療についても臨床研究が行われています。
研究では、
鼻症状
症状スコア
生活の質(QOL)
薬剤使用量
などへの影響が調べられています。
2024年にはアレルギー性鼻炎に対する鍼灸の臨床ガイドラインも報告され、鍼治療を支持する研究結果がある一方で、項目によってエビデンスの質にはかなり差があります。
したがって現時点では、
「鍼灸をすれば花粉症そのものが治る」
と断定するのではなく、
鼻症状の軽減や生活の質の改善を目的とした補完的な選択肢の一つ
として考えるのが適切でしょう。
首や肩の状態も確認します
花粉症の時期には、鼻づまりや睡眠不足などにより首肩の緊張や頭重感を訴える方もいます。
そのため鍼灸マッサージでは、
鼻だけでなく、
後頭部首肩背中
などの緊張状態を確認することがあります。
「あくまで鼻だけを治療する」のではなく、身体全体を確認できることは鍼灸マッサージの特徴の一つです。
花粉症対策は鍼灸だけでなく「花粉を避けること」も大切
花粉症では、どの治療を行う場合でも花粉への曝露量を減らすことが基本です。
花粉が多い時期には、
マスクを使用する
必要に応じて眼鏡を使用する
帰宅時に衣類についた花粉を落とす
手洗い・洗顔を行う
花粉の多い日の長時間の外出を控える
洗濯物や布団への花粉付着に注意する
といった対策を組み合わせてみてください。
また毎年症状が強く出る方は、症状がひどくなってから我慢するのではなく、早い段階で耳鼻咽喉科などへ相談することも大切です。
こんな場合には医療機関へ
「いつもの花粉症だろう」と思っていても、別の疾患が隠れていることがあります。
特に、
高熱が続く
強い顔面痛がある
膿のような鼻汁が続く
片側だけ強く鼻がつまる
鼻血を繰り返す
息苦しさや喘鳴がある
症状が非常に強い
市販薬を使用しても改善しない
などの場合には、耳鼻咽喉科などの医療機関を受診してください。
まとめ ― 花粉症も「その人の身体」をみる
花粉症は現代医学では、花粉に対して起こるIgEを介したアレルギー反応として説明されます。
一方、東洋医学では、
肺・脾・腎・衛気・寒熱・虚実・気・血・津液
などを手掛かりに、「なぜこの人にはこのような症状が現れているのか」を考えます。
そのため同じ花粉症でも、
鼻水が多い人鼻づまりが強い人目のかゆみが強い人疲労を伴う人胃腸症状を伴う人
では、鍼灸治療の組み立ても同じとは限りません。
鍼灸マッサージ青風堂では、花粉症という病名だけを見るのではなく、現在の症状や生活状態、身体所見を確認しながら、その方に合わせた施術を考えていきます。
薬物療法や花粉対策とうまく組み合わせながら、つらい花粉シーズンを少しでも過ごしやすくすることを目指します。



コメント