ストレートネックと頸椎症の違い|同じものではありません
「ストレートネックと言われたのですが、これは頸椎症なのでしょうか?」
首や肩の症状で来院される方から、このような質問を受けることがあります。
結論からいうと、ストレートネックと頸椎症は同じものではありません。
ストレートネックは主に「首の骨の並び方」を表す言葉であり、頸椎症は椎間板や椎骨、関節などに加齢性・変性的な変化が起こった状態を指します。
ただし、両者が同時にみられることはあります。

本来の首には緩やかなカーブがあります
人の頸椎は、横から見ると本来、前方へ緩やかに弯曲しています。
これを「頸椎前弯」といいます。
このカーブがあることで、頭の重さや歩行時などに加わる衝撃を分散しやすくなっています。
ところが、レントゲンなどで見たときに、この前弯が少なくなり、頸椎が比較的まっすぐに並んでいる状態を一般に「ストレートネック」と呼びます。
ストレートネックそのものは病名というより、頸椎の配列や姿勢上の特徴を表す言葉として使われることが多いものです。
ストレートネックはなぜ起こる?
ストレートネックには、さまざまな要因が関係します。
代表的なものとして、
・スマートフォンやパソコンを長時間使用する・うつむいた姿勢を長時間続ける・猫背や巻き肩がある・首や肩の筋肉が強く緊張している・胸椎や肩甲骨の動きが低下している・痛みを避けるため首のカーブが一時的に減少している
などがあります。
そのため、「スマホの使い過ぎだけが原因」とは限りません。
また、ストレートネックがあっても、まったく症状のない方もいます。
大切なのは、画像上の形だけで判断するのではなく、実際の症状、首の動き、筋肉の緊張、神経症状などを総合的にみることです。
頸椎症とは?
一方の頸椎症は、主に加齢などによって頸椎や椎間板、椎間関節などに変性が起こった状態です。
椎間板の水分が減少したり、椎間板の高さが低くなったり、骨の縁に「骨棘」と呼ばれる変化が生じたりすることがあります。
こうした変化は年齢とともにある程度みられるもので、画像上で変化があっても、必ずしも症状が出るわけではありません。
しかし、変性によって神経の通り道が狭くなると、症状が現れることがあります。
頸椎症ではどんな症状が出る?
頸椎症では、
・首や肩の痛み・首を動かしたときの痛み・肩甲骨周囲の痛み・腕や手のしびれ・腕の痛み・握力低下・手先の動かしにくさ
などがみられることがあります。
神経根が刺激される状態は「頸椎症性神経根症」、脊髄が圧迫される状態は「頸椎症性脊髄症」と呼ばれます。
特に脊髄症では、
・箸が使いにくくなった・ボタンが留めにくい・字が書きにくい・歩きにくい・足がもつれる・両手や両足にしびれがある
などが現れることがあります。
このような症状がある場合は、早めに整形外科などで診察を受けることが大切です。
ストレートネックと頸椎症の違い
簡単に整理すると、
ストレートネック=首のカーブが少なく、比較的まっすぐになっている状態
頸椎症=椎間板や椎骨、関節などに変性的な変化が起こっている状態
という違いがあります。
したがって、
「ストレートネックだから頸椎症」
とは限りません。
反対に、頸椎症がある人にストレートネックがみられる場合もあります。
両者は別のものですが、同時に存在することはあります。
首だけを見ないことも大切です
ストレートネックによる症状を考えるとき、首だけを見るのでは十分ではありません。
頭の位置、肩甲骨、胸椎、骨盤、呼吸の状態なども首への負担に影響します。
例えば、背中が丸くなり頭が前に出ると、首の後ろの筋肉は常に頭を支え続けることになります。
頭は体重の約1割程度の重さがあるため、頭部が前方へ移動するほど首や肩の筋肉には負担がかかりやすくなります。
その結果、
・首こり・肩こり・後頭部の痛み・緊張型頭痛・肩甲骨周囲の痛み
などにつながる場合があります。
東洋医学からみるストレートネックと頸椎症
東洋医学では、ストレートネックや頸椎症という西洋医学上の病名そのものに一対一で対応する考え方はありません。
その代わりに、首の痛み、肩こり、動かしにくさ、腕のしびれなどの症状と、その人の体質や全身状態を組み合わせて「証」を考えていきます。
気血の巡りが悪くなる「気滞・血瘀」
首や肩のこりが長く続く方では、気や血の巡りが滞っている状態として捉えることがあります。
東洋医学では、気血がスムーズに巡っていることで筋肉や関節が養われると考えます。
ところが、長時間同じ姿勢を続ける、精神的な緊張が強い、運動不足が続くなどによって巡りが悪くなると、首や肩の張り、重だるさ、痛みなどが現れやすくなります。
特に、痛む場所がはっきりしていて、刺すような痛みや慢性的な痛みがある場合には「血瘀」が関係していると考えることがあります。
「筋」は肝と関係が深いと考える
東洋医学では、筋や腱の働きは「肝」と深く関係すると考えます。
肝には、気の流れを調節する働きや、筋肉・腱を養う血を蓄える働きがあるとされます。
そのため、疲労、睡眠不足、精神的ストレスなどが続いて肝の働きが乱れると、
首や肩が緊張しやすい
筋肉がこわばる
体を動かしにくい
頭痛や目の疲れを伴う
といった症状につながることがあります。
特に、仕事や精神的緊張によって肩に力が入りやすい人では、「肝気鬱結」などの状態を考えることがあります。
年齢とともに「腎」の不足が関係することも
頸椎症のように加齢性の変化が関係する場合には、東洋医学では「腎」の働きにも注目します。
東洋医学でいう腎は、単に腎臓という臓器だけを意味するのではなく、成長、老化、骨、髄などに関係すると考えられています。
「腎は骨を主る」という考え方があり、加齢に伴って腎の働きが低下すると、
腰や膝が弱くなる
骨や関節の衰えが出やすくなる
首や腰に慢性的な症状が出る
と考えることがあります。
このような場合には、首だけを治療対象とするのではなく、全身の虚弱や疲れやすさなども含めて施術方針を考えます。
冷えや湿気による「寒湿」の影響
「寒い日に首や肩がつらい」「雨の日に重だるくなる」といった方では、寒や湿の影響を考えることがあります。
寒さによって筋肉が緊張し、気血の巡りが悪くなると、首や肩がこわばりやすくなります。
また、湿気が強い時期に症状が重く感じられる場合には、「湿」が身体に影響していると考えることもあります。
このような場合には、身体を冷やしすぎないことや、適度に身体を動かして循環を保つことも大切です。
経絡の流れから首肩をみる
首や肩には、督脈、膀胱経、胆経、小腸経、三焦経など複数の経絡が通っていると考えます。
そのため、実際の鍼灸施術では、痛みの場所だけではなく、
後頭部
肩甲骨周囲
腕
手
背中
などの反応も確認しながら経穴を選ぶことがあります。
たとえば、首の後ろの張りが強い場合、肩や背中だけでなく、手足の経穴を使用して全体の巡りを整えることもあります。
「不通則痛」と「不栄則痛」
東洋医学では、痛みの考え方として「不通則痛」と「不栄則痛」という考え方があります。
「不通則痛」は、気血の流れが滞ることで痛みが起こるという考え方です。
一方、「不栄則痛」は、身体を養う気血が不足して、筋肉や関節が十分に養われないことで痛みが起こるという考え方です。
ストレートネックや頸椎症の方でも、筋肉が過緊張しているタイプと、疲労や加齢によって筋力や体力が低下しているタイプでは、東洋医学的な見方は異なります。
そのため、同じ「首が痛い」という症状であっても、治療方針は一人ひとり違ってきます。
鍼灸では全身状態も含めてみていきます
鍼灸施術では、首や肩の筋肉だけではなく、
睡眠
疲労
冷え
胃腸の状態
ストレス
頭痛
目の疲れ
腰や膝の状態
なども確認しながら、その人に合った施術を考えていきます。
ストレートネックや頸椎症は、構造的な問題だけですべてが説明できるとは限りません。
現代医学的に神経や筋骨格系の状態を確認しながら、東洋医学的には気血・臓腑・経絡の状態もみていくことで、より多角的に症状を捉えることができます。
鍼灸ではどのように対応する?
鍼灸施術では、ストレートネックそのものの骨の形を直接変えることを目的にするというより、
・首や肩周囲の筋緊張を和らげる・肩甲骨周囲の動きを整える・痛みに関連する筋肉や経穴へ刺激を行う・身体全体の緊張状態を調整する
といった方向から症状の改善を目指します。
首だけでなく、僧帽筋、肩甲挙筋、後頭下筋群、胸鎖乳突筋、肩甲骨周囲などの状態も確認しながら施術を行います。
また、必要に応じて背中や腕などにも施術を行い、首に集中している負担を全体から調整していきます。
慢性的な首肩こりでは、鍼灸とあん摩マッサージを組み合わせて筋緊張や身体のバランスを整えていくことも選択肢の一つです。
ストレートネック・頸椎症と後頭神経痛の関係
ストレートネックや頸椎症がある方では、首や肩のこりだけでなく、後頭部にしびれ、ピリピリ感、チクチクする痛み、電気が走るような痛みを感じることがあります。
こうした症状には、後頭部の感覚を伝える「後頭神経」が関係している場合があります。
後頭神経とは?
後頭部の感覚には、主に
大後頭神経
小後頭神経
第三後頭神経
などが関係しています。
特に大後頭神経は、上位頸椎付近から後頭部へ向かって走行しており、首の深い部分にある筋肉や筋膜の近くを通っています。
そのため、首周囲の筋緊張が強くなったり、姿勢の崩れが続いたりすると、神経が刺激されて後頭部に痛みやしびれ感が出ることがあります。
ストレートネックとの関係
ストレートネックでは、頭が前方へ出る姿勢になりやすく、首の後ろ側の筋肉が頭を支えるために常に働き続けることがあります。
特に、
後頭下筋群
僧帽筋上部
頭板状筋
頸板状筋
などが緊張すると、後頭神経周囲への負担が増えることがあります。
ただし、ストレートネックそのものが直接後頭神経を圧迫するとは限りません。
むしろ、ストレートネックに伴う姿勢の変化や筋緊張によって、結果として後頭神経が刺激されやすくなると考えるほうが適切です。
頸椎症との関係
頸椎症では、加齢などによる椎間板や椎間関節の変性がみられます。
特に上位頸椎周囲に関節の変化や筋緊張がある場合には、後頭部の感覚異常や痛みに関係することがあります。
また、頸椎症では首や肩の痛みだけでなく、神経根への刺激によって腕や手にしびれが出ることもあります。
そのため、後頭部のしびれに加えて腕や手のしびれ、筋力低下などがある場合には、単純な後頭神経痛だけでなく、頸椎の神経症状についても確認が必要です。
後頭神経痛ではどんな症状が出る?
後頭神経が刺激されると、
後頭部がピリピリする
チクチクする
電気が走るように痛む
頭皮に触れると痛い
髪をとかすだけで違和感がある
耳の後ろから頭頂部へ痛みが走る
といった症状が出ることがあります。
一般的な肩こりからくる重だるい頭痛とは、やや性質が異なることがあります。
鍼灸ではどのように考える?
鍼灸施術では、痛みやしびれが出ている場所だけでなく、首・肩・肩甲骨周囲の筋緊張や全身の状態を確認します。
特に後頭神経周囲への負担に関係しやすい首の深部筋や肩周囲の緊張を確認し、必要に応じて鍼やあん摩マッサージを用いて筋緊張の緩和を図ります。
東洋医学的には、後頭部から首にかけては膀胱経や胆経、督脈などの経絡とも関係が深い部位です。
症状の出方や体質によって、局所だけでなく手足の経穴なども組み合わせて施術することがあります。
医療機関での確認が必要な場合
後頭部のしびれや痛みは、すべてが後頭神経痛とは限りません。
次のような場合には、早めに医療機関での評価が必要です。
突然これまでにない強い頭痛が出た
手足のしびれや力の入りにくさがある
ろれつが回りにくい
顔のしびれや麻痺がある
めまいや意識の異常を伴う
症状が急速に悪化している
後頭部の違和感が続く場合には、「首こりのせい」と決めつけず、症状の経過や神経症状の有無を確認することが大切です。
日常生活で意識したいこと
ストレートネックが気になる方は、次のようなことを意識してみましょう。
・スマートフォンをできるだけ目の高さに近づける・30~60分ごとに姿勢を変える・長時間同じ姿勢を続けない・肩甲骨を軽く動かす・胸を無理なく開く・首だけを強く反らす運動は避ける・睡眠や休息を十分にとる
大切なのは、「首を無理に反らしてカーブを作ろう」としないことです。
症状の原因は首だけとは限らないため、全身の姿勢や動きを整えることが重要です。

こんな症状がある場合は医療機関へ
次のような症状がある場合は、鍼灸施術を受ける前に、または施術と並行して医療機関での評価をおすすめします。
・腕や手の強いしびれが続く・筋力が明らかに低下している・手先が急に使いにくくなった・歩行が不安定になった・両手両足にしびれがある・排尿や排便の異常がある・外傷後に強い首の痛みが出た
神経根や脊髄の圧迫が疑われる場合には、画像検査などによる確認が必要になることがあります。
まとめ
ストレートネックと頸椎症は同じものではありません。
ストレートネックは首のカーブが減少した状態を表す言葉であり、頸椎症は椎間板や椎骨などに変性的な変化が起こっている状態です。
ストレートネックがあっても症状がない人もいれば、首肩こりや頭痛などが起こる人もいます。
そのため、画像上の「首がまっすぐ」という所見だけにとらわれるのではなく、
・どこが痛むのか・首がどのくらい動くのか・筋肉の緊張はどうか・神経症状がないか・肩甲骨や背中の動きはどうか
などを総合的に確認することが大切です。
鍼灸マッサージ青風堂では、首だけを見るのではなく、筋肉・関節・姿勢などの現代医学的な視点と、東洋医学的な体質・全身状態の両面から身体を確認し、一人ひとりの状態に合わせて施術を行っています。
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